【フィリピノ・ワールド】イハウ・イハウ Ihaw-ihaw

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2022年5月10日

 

 

 

 

 みなさん、こんにちは。Kumusta kayo? フィリピンの街角で売っているバーベキュー「イハウ・イハウ」。イハウ(ihaw)というのは火であぶって焼くことです。この言葉を活用したイニハウ(inihaw)は「焼いた」という意味になるので、「イニハウ・ナ・マノック」(焼いた鶏肉)とか「イニハウ・ナ・イスダ」(焼き魚)のように使ったり、「イニハウ」と「イハウ・イハウ」が同じ意味で使われたりします。

 

 ビサヤ地方のイロイロやバコロドでは焼くことをアサル(asal)、焼いたものをイナサル(inasal)と呼びます。近年フィリピンで全国展開しているイナサルのチェーン店があるのでご存知の方もいるでしょう。

 

 「イニハウ」も「イナサル」も同じように炭火で焼く調理法ですが、一般に「イニハウ」が主に醤油とケチャップをベースにした甘辛い味付けなのに比べて、「イナサル」の方は塩味にショウガやレモングラス、カラマンシなどの香りやアナトー(ベニノキ)の種で黄色く色を付けているという違いがあります。

 

 

 

「ヘルメット」と「ウォークマン」

 イハウ・イハウの部位はポーク・バーベキューや鶏肉の手羽(pakpak)、胸肉(pecho)、もも肉(hita)などが一般的ですが、「ヘルメット」や「ウォークマン」といった変わった名称の部位もあります。ヘルメットは「頭」に被るものなので、鶏の頭と首の部分のことです。ウォークマンは一世を風靡したソニーの携帯音楽プレーヤーで、イヤホンで聞くものから「豚の耳」の呼び名となっています。

 

 

 

「ベータマックス」(Betamax)

 ベータマックスはソニーが販売していたビデオテープと録画再生システムで、フィリピンでは80年代から90年代初頭にかけて人気を博しました。イハウ・イハウの方の「ベータマックス」は長方形の形や磁気テープを連想させる茶色い色からこう呼ばれたと言われます。このレバーのような四角い肉片の正体は、鶏または豚肉の血を凝固し、四角く切ったものです。

 

 

 

イハウ・イハウが描かれたTシャツ。Artwork SM Dasma店で購入(写真提供:まりぼー君)

 

 

 

「アディダス」 (Adidas)

 アディダスはスポーツ用品で有名ですが、中でもフィリピンの人が真っ先に思い出すのはシューズ。靴は足に履く物なので、イハウ・イハウでアディダスと言えば鶏の足のことです。

 

 アディダスの昔のロゴが3枚の葉を扇形に広げて並べたようなデザインだったので、それが鶏の足の形に似ていることから名付けられた、という説もあります。一般的に足は「パア」(paa)とも呼ばれます。

 

 

 

「ドス・トレス」(Dos-Tres)

 Dos-Tresとはスペイン語の2と3のこと。これは豚の心臓、肺とスジのことです。豚の肺と心臓の部位はボーピス(bopis)が正式な名称ですが、以前はボーピスが2ペソでスジの部分が3ペソだったことから、肺や心臓とスジの組み合わせが「2・3」という意味で「ドス・トレス」と呼ばれたそうです。

 

 

IUDとマグホイール(mag wheel)

 IUDといえば受精卵の着床を防ぐ避妊具のことですが、バーベキューの世界では鶏の腸のこと。長い鶏の腸を何度も折りたたんで串に刺した形がIUDに似ているというので、この名称で呼ばれるようになったそうです。マグホイールは車のタイヤの外側に付けるホイールのことですが、バーベキューのマグホイールは豚の腸を輪切りにして串刺しにしたもの。車のタイヤのような丸い形からこの名称で呼ばれています。腸の部分のバーベキューの正式名称はイサウ(isaw)といいます。

 

 

 よく帰宅途中の人達が道端でイハウ・イハウを買って食べているのを見かけると、ついつられて買ってしまいそうになりますが、非衛生的な環境や容器で処理されている場合もあるので注意が必要です。できるだけ清潔に処理されている物を食べるようにして、安全なフィリピン生活を楽しんでくださいね。

 

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文:デセンブラーナ悦子 日英・タガログ語通訳。大阪外大フィリピン語学科卒。在学中にフィリピン大学に交換留学。フィリピン人男性と1992年に結婚後マニラ在住。

Twitter:フィリピン語ミニ講座@FilipinoTrivia

 

 

 

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