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【緊急寄稿】カガヤン洪水被害に思う

2020年11月18日

 

寄稿:反町 眞理子(コーディリエラ・グリーン・ネットワーク代表)  

 

「45年ぶりの大洪水」
ダム放水が国内最長の大河へ

 

 11月11から12日にかけてフィリピンを襲った台風22号(フィリピン名ユリシーズ)は、ルソン島に甚大な被害を及ぼした。報道ではマニラ首都圏のマリキナ市の洪水が大きなニュースとなったが、その後台風が北上したルソン島北部の被害については報道が少ない。

 

 

 被害が大きかったのは、カガヤンバレー地域のイサベラ州、カガヤン州、そしてコーディリエラ山岳地方のイフガオ州。1週間経った今も水が引いていない地域もあり、被害の全貌は明らかではないが、16日時点で台風ユリシーズによる死亡者は69名、行方不明者は12名。そのうち24名がカガヤン州で、イフガオ州が10名と発表されている。

 

 

 カガヤン州、イサベラ州での洪水の原因の一つは、イサベラ州とイフガオ州にまたがるマガットダムの放水によるものだ。一気に水位が上がり、フィリピン最長のカガヤン川の流域に大規模な洪水を引き起こした。カガヤン州のマニュエル・マンバ知事によると「45年ぶりの大規模な洪水被害」だそうだ。

 

 

 4週間の間に6つの台風がフィリピンに上陸し、土壌の保水力も限界に達していた。そして一気に大量の水が、カガヤン州の西のコーディリエラ山脈と東のシエラ・ネバダ山脈から、カガヤン川に流れ込んだ。普段は穏やかなマガッドダムは危険水位に達し、緊急放流を夜間に行わざるをえなかっという。恐ろしい勢いでゲートが放出されるマガットダムの水、茶色い湖と化したカガヤン州の遠景、屋根の上で着の身着のままで救助を待つ人の写真などがフェイスブックに投稿され、大きな衝撃を与えている。

 

 

フェイスブックに投稿されたマガッドダムの放水の様子。 https://www.facebook.com/watch/?v=1357378517927450&_rdc=1&_rdr

 

 

被災地町長の直言
「原因は自分たちにあり」

 

 大きな被害を受けたカガヤン州の地方自治体の一つ、カガヤン川沿いのトゥゲガラオの下流に位置するアルカラ町のアントニオ町長が洪水被害のさなかの14日、自身のフェイスブックへの投稿した記事は印象的だった。短絡的に原因をダムの放水に求めようとする人々に対して、次のように投稿している。

 

 

「それは私たち自身のことであり、私たちの生き方のことです。まるで私たちが自然からかけ離れているかのように、私たちがしたことは私たちに返ってこないかのように、ふるまっている私たち自身の在り方がこういう結果を生みました。私たちがいかにして木を切り、森を破壊し、土壌や地下水を破壊してきたか、いかにして農場や建築物で土地を食い荒らしてきたか、私たち自身が原因なのです」

 

 アルカラ町では、昨年12月にも台風ではないモンスーンの雨による洪水に見舞われ、町内の6つのバランガイが水没した。町は「どうしてこれほどの洪水が起きたのか」と、フィリピン大学海洋研究所の前所長で河川海洋地質学の第一人者、フェルナンド・シリンガン博士に、洪水とアルカラのカガヤン川、パレッド川の川岸浸食についての調査を依頼した。

 

 

 この地域では、以前より洪水対策のために大規模な川幅の拡張工事の必要性が指摘されてきたが、実現されてこなかった。それに加えて、洪水の原因の一つは近年のカガヤンバレーの山岳部における原生林の消失だ。土壌を保全し水分量の調節機能を果たす森が人の手によって切り開かれているのだ。森林消失の原因は、違法な森林伐採と農地への転換である。特にフィリピンでは「ジャパニーズコーン」の別名のある黄色いトウモロコシ畑へ転換するために貴重な原生林が切り開かれ、除草剤の使用によって土壌が弱体化していると、調査報告がなされた。

 

 

 町長は、調査の結果を受け、アルカラ町では12のかんがいダム流域の農家に対し、コーン栽培をやめてアグロフォレストリー(※)に移行するように説得してきたのだそうだ。300ヘクタールにおよぶ地域に、原生林、花木、果樹の植樹を開始した。25のバランガイで、世界的に知られる宮脇方式(植物学者宮脇昭氏が提唱する植樹法)で、在来種の植樹による森林再生プログラムを始めたところだそうだ。

 

※アグロフォレストリー(Agroforestry):森林を伐採して農地に転換するのではなく、成長のサイクルが異なるさまざまな植物が共存する森林本来のあり方にならい、複数の農作物を栽培・収穫しながら森林再生を目指す農法。

 

 今回の洪水の被害の全貌はこれから明らかになっていくと思われる。新型コロナの感染拡大と重なり、ボランティアや人々の移動は制限されていて、救援活動、そしてそれに続く復旧活動にはかなりの時間がかかると思われる。中央政府のサポートがどの程度行きわたるか確信がないまま、互助精神にあふれるフィリピンの人の間では、Save Cagayan Valleyの支援の動きが起こり始めている。

 

 今、変わらなくていつ変われるのだろうか?

 

 

 

反町 眞理子

環境 NGOコーディリエラ・グリーン・ネットワーク(Cordillera Green Network / CGN)代表。Kapi Tako Social Enterprise CEO。山岳地方の先住民が育てた森林農法によるコーヒーのフェアトレードを行う社会的企業を運営。

Yagam Coffee オンラインショップ https://www.yagamcoffeeshop.com/

コーディリエラ・グリーン・ネットワーク  https://cordigreen.jimdofree.com/

 

 

 

 

 

カガヤン洪水被災地支援活動にご協力をお願いいたします

 コーディリエラ・グリーン・ネットワークでは、バギオ市の環境ショップEco Martと共同で、カガヤン州の被災者支援のための寄付の募集を行っています。寄付はCGNとEco Martのネットワークで、カガヤン州で活動する地元団体を通し復興活動や環境保全活動に使われます。

【募金振込先】

〈フィリピン国内から〉

Bank of the Philippine Islands(BPI), Baguio branch

Savings account

0573-2638-98

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〈日本から〉

銀行:広島銀行

支店名:向島支店 (店番号097)

口座番号:3077610

普通口座

口座名:コーディリエラグリーンネットワーク日本事務局

 

 
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