約10カ月ぶりに、マカティ市アモルソロ通り沿いのザ・ギャラリー、マイルロング界隈に足を踏み入れた。コロナの前までよく行っていたフィリピン料理と日本料理を出すレストランはなくなり、いつ営業しているか不明だった中国料理店らしき店もなくなっていた。そして、その中国料理店のあった場所に、別の中国料理店がオープンしていた。いつオープンしたんだろう? 名前は「三八食堂」。英語でThree Eight Restaurantとある。サーティエイトでもなければ、sān bāと中国語読みでもないらしい。看板にHaiwaixiang Restaurantとも書いてある。
2年ほど前まで、マカティスクエア界隈にはディープな中国料理店がどんどん開店していたが、コロナ禍で多くが閉店した。そうした中でオープンしたこの中国料理店に興味を持ち、平日のランチタイムに行ってみた。
客は私しかいなかった。店のスタッフらしき腕に入墨を入れた男性が2人向かい合って座り、パソコンに向かっている。2人ともマスクはしていない。ソーシャルディスタンスは保たれるだけの広さがある店なので、大きな円卓に座った。女性の店員がやってきて、いきなり私に「从哪里来的?」(と言われたんだと思う)と聞かれたので、昔中国語をかじったことがあり、シンガポールにいたこともあるので、ここは中国語だろうと、リーベン、リューベンといろいろがんばって答えてみたが通じず。ジャパンというと一発で通じた。
メニューを見ると、表記は中国語のみ。しかし、肉糸糸炒面、肉の細切り入り焼きそばと解釈し、無事注文できた。持ち帰りを頼もうと、これまた私の頭の片隅にわずかに残っている打包という中国語をダーバオと言ってみたところ、今度はなんと一発OK。
英語でお姉さんにこの店はいつできたの?と聞いてもなかなか通じなかったが、お姉さんが上海から来たということはわかった。なんだ、上海出身だから私の普通話 が通じないわけだと思うのは、全くの間違いである。
ここは四川料理店ですか?とスーチャン、シューチェン、スーチュワン、いろいろ言ったが通じず、紙に四川と書いて見せたら答えはイエス。「はい、この店は四川料理店です」という意味なのか、「はい、あなたが書いた漢字は正しいです」という意味なのかはわからない。
よく見ると、店の壁には社会主義のプロパガンダっぽいアートが描かれているように思える。ひょっとして店名の三八とは、朝鮮半島の38度線を意味するのではないかと妙な想像もしたくなる。
持ち帰って食べた炒麺は、まずタッパウェアにぎっしり詰まったそのボリュームに驚かされ、味は意外にもあっさり目だった。肉もたくさん入ってやわらかかった。コロナ禍で退屈している身には、なかなか楽しいディープなチャイニーズレストランである。(K)