カビテに残る昔ながらの「塩田」ー製塩衰退、ロックソルトのミニ観光スポットにー

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2017年5月3日

ぷろびんしゃの風景
海水を蒸発させて天然の塩を作る「塩田」がマニラ首都圏南郊、カビテ州の海べりに数カ所、ひっそりと残っている。製塩業が衰退するいっぽうで、地場産業を懐かしむ人たちが時折見学に訪れ、塩田はミニ観光スポットにもなっている。
製法は昔ながらの天日(てんぴ)採塩法で、満潮時に海水を塩田に引き入れ、水分を蒸発させて作る。海水を塩田の間にある幅4、5メートルの溝に流し込み、そこで水分を蒸発させて濃度を高めた後、その海水を塩田に導き、天日で塩を結晶化させるというものだ。塩田の底には瓦や素焼きの破片が敷き詰められていることから、塩田はソルトベッドとも呼ばれている。
30平米ほどの区画に仕切られた塩田では強い日差しの下、頬かむりをした作業員が木製の「とんぼ」で、水分が蒸発した後に残った白っぽい半乾きの塩をかき集めていた。炎天下の作業は重労働。後継者がいないのが製塩業界の悩みだ。塩田の脇には塩の小山が点々と続く。ここでの製塩は季節的な産業で、年間を通して行われるわけではない。雨季には一帯が冠水することもあるため、テラピア(黒姫鯛)養殖池に変わる。雨季の始まりと共に稚魚を放すと乾季までには成長する。
1980年代まではカビテの近辺は製塩業が盛んで、ブラカン州と並ぶ一大産地だった。しかし近年、乾季に雨が降ったりなどの異常気象や、海水汚染で需要が減ったことなどから製塩業を畳む人が多く、今では数家族がかろうじて塩田を維持している。
日本では塩田が消えて久しいが、近年、ミネラル分が豊富で漬物や魚の塩焼きなどによく合うという理由から天然塩の人気が高まってきている。いっぽうフィリピンでは、小エビや魚を発酵させて作る塩辛のバゴオンや調味料の魚醬(パティス)の製造にはこの天然塩が不可欠だ。北のパンガシナンやイロコス州では依然として製塩が盛んだ。
約5ヘクタールの塩田では祝日でもないのにフィリピン国旗が風になびいていた。最近では町なかのアギナルド博物館に行ったついでに、塩田に立ち寄って出来立てのロックソルトを買って帰る観光客もいる。
Saltern in Cavite
Salt making begins in October with harvest season running from December to May, before the start of the rainy season when the area is converted into a fish pen. A piece of land, called a saltern, is used as a salt farm during the summer season. The method used in salt-making is said to come from the Chinese traders long before the Spaniards discovered the Philippines.

濃度が高くなった海水をバケツで穴から塩田にすくい上げる。この穴は左の溝と暗きょでつながっている。

濃度が高くなった海水をバケツで穴から塩田にすくい上げる。この穴は左の溝と暗きょでつながっている。


濃度が高くなった海水をバケツで穴から塩田にすくい上げる。この穴は左の溝と暗きょでつながっている。

水分が蒸発して半乾きの塩ができる


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塩田を訪れた観光客の一行

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