チボリの里、レイクセブ(ミンダナオ島南コタバト州)

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2017年3月17日

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丘の上に集まってきたチボリの少女ら。その先にはセブ湖が見えている。


The highlands of South Cotabato is the town of Lake Sebu, home to the indigenous T’boli tribe.
ミンダナオの南コタバトの高原にある湖の景勝地、レイクセブ(セブ湖)。その湖を見下ろす山の中腹に先住民のチボリが生活しています。写真は村の集会所でチボリを支援するNGOと会合をもった時のものです。どこからともなく小高い丘にたくさんの子供たちがやってきました。チボリの家はニッパ椰子でできた高床式で、斜面にぽつりぽつりとあります。
もともとセブ湖周辺はチボリの住む土地でしたが、1970年代のマルコス時代の移住政策により土地がやせたイロコス地方や貧しいビサヤ地方からたくさんのクリスチャン農民が入植してきました。今も湖畔の町ではビサヤのイロンゴ(ヒリガイノン)語がいちばんよく話されていますし、去年の大統領選ではボンボン・マルコス氏が真っ先にここに遊説にやってきました。イロコス出身者の票が目当てでした。
ミンダナオは当時、「希望の土地」としてもてはやされましたが、入植先には精霊崇拝のチボリが住んでいたのです。チボリにとり、土地は先祖から受け継ぐもので土地登記などしていなかったため、しかたなく湖畔を追われるようにして山に上がったのです。そして現在も、セブ湖を見渡せるこの場所に住んでいます。家の床下には黒豚がいたり、共同井戸の周りでは少女らが水浴びや洗濯をしていて見た目にはのどかですが、現金収入が少なくて生活は大変です。
チボリの有名な伝統織物に「ティナラック」があります。アバカ繊維を使い赤と黒を基調にしたデザインで、マカティのお土産店でもよく見かけます。チボリの少女らはみんな可愛くて、祭りや祝い事の時には、真ちゅうや竹などの自然材を使ったビーズや装飾品で着飾ります。刺繍を施したチボリ族の衣装は独自のもので、いまも母から娘の世代へと受け継がれています。   (写真と文:ミッシェル・ゴー)
◎ Navi Manila Vol.31 より

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