パンシット(フィリピンの麺類)  前編

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2018年6月8日

フィリピンでお祝いごとと言えば、必ず並ぶのがパンシット(pancit)。長い麺が長寿を表すため誕生日やお祝いにはかかせません。フィリピンの代表的な料理の一つでもあるパンシットですが、本来は中国からの移民が持ち込んだ食文化でした。語源は福建語の「便食」(pian-e-sit)。さっと作ってすぐ食べられる「簡便な食事」という意味だそうです。麺や調理法も様々ですが、前編ではフィリピン文化の一部となった中華麺について見ていきましょう。

パンシット・カントン(Pancit Canton)

Pancit Canton

一般的に誕生日 などのお祝いに食べる麺がこの「パンシット・カントン」。つまり広東風の焼きそばという意味です。中華料理店などでは「バースデー・ヌードル」と書いてあるものもあります。黄色い卵入り麺が野菜や肉、魚の練り物などと一緒に炒めてあり、日本の焼きそばに一番近い印象です。塩または醤油ベースの味付けで、カラマンシを絞って食べるのが一般的です。「パンシット・カントン」と言えばスーパーなどで買えるインスタントのものも、フィリピン人は朝食やメリエンダ(間食)によく食べます。カラマンシ醤油味やスパイシーな味がなかなか癖になる味ですが、こちらは炒めた野菜や肉と合わせることはあまりないようです。

 

パンシット・ミキ・ビーホン(Pancit Miki-Bihon)

Pancit Miki-Bihon

どこの町にも大概パンシットをテイクアウトできるお店「パンシテリア」(panciteria)がありますが、そんな店での人気メニューの一つがパンシット・ミキ・ビーホン。ミキというのは小麦粉から作った黄色い卵入り麺です。ビーホンはいわゆるビーフン(米粉)のことで、米の粉から作った麺です。なぜ2種類の、太さも食感も違う麺を混ぜるのかはわかりませんが、二種類入っているからお得感があるのでしょうか。こちらは野菜炒めのあんかけになっている物が多いです。

ビーホン・ギサード(Bihon Guisado)、ソータンホン・ギサード(Sotagnhon Guisado) 
「ビーホン・ギサード」「ソータンホン・ギサード」等「ギサード」と書いてあるメニューが良くありますが、「ギサ」(gisa)というのはタガログ語の「炒める」という言葉ですが、メニューではスペイン時代の名残で ”Guisado”と綴られることがよくあります。スペイン語では「〜do」と活用すると動詞を形容詞として「〜した」という意味で使うので、「炒めた」という意味になります。つまりビーホン・ギサードは炒めビーフン、日本で言うところの焼きビーフンです。ソータンホンは緑豆春雨。つまりソータンホン・ギサードは春雨の焼きそばなのです。

ミスア(Misua)

Misua

ミスアというのは、日本のそうめんにそっくりの白くて細い麺です。食用のヘチマなどと一緒にスープにするのが一般的な食べ方。ミスアは福建語で「麺細」(Mi-soa)というそうです。日本のそうめんと比べると、細さがバラバラですが、日本人には親しみやすい麺の一つです。スーパーでも購入できますが、市場の八百屋や乾物屋、サリサリストアなどでは、一回分の小分け袋で販売しています。

 

パンシット・マミ(Pancit Mami)
カントンと並び最もポピュラーな麺、パンシット・マミはフィリピン版のラーメン。雨の降る涼しい日などに好んで食べられます。「マミ」はフィリピン全土で一般的な名称で、インスタント・マミも販売されているほどですが、実は1920年にフィリピンで店を出したマ・モン・ルック(Ma Mon Luk)という人が自分の名前「マ」の麺ということで「マ・ミ(馬麺)」と呼んだのが始まりだそうです。ところが商標登録しなかったために皆に真似され、「マミ」という名称がヌードル・スープ全般に使われるようになってしまったのだそうです。マ・モン・ルックはフィリピンで初めて肉まんを「ショーパオ(焼包)」(siopao)として販売したことでも知られています。
次回はフィリピン各地発祥のパンシットについて見ていきましょう。(悦)

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