【セブ通信】インターネット不通でよみがえる 読書の日々

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2022年3月9日

  蝶谷正明(セブ日本人会)

 
 
 
   この原稿を書いているのは台風オデットから5週間が過ぎた、1月下旬です。水道は2日目、携帯電話はさらにその数日後、電気は3週間で復旧しました。それほど不便を感じない生活が戻ってきましたが、インターネットはまだつながりません。今住む家に引っ越した時に、テレビとは縁を切りました。したがって、セブ市内の状況から国際情勢まではほぼ情報が途絶し、外部との連絡はまだまだ不安定な携帯電話が唯一の頼りです。
 

 この不便な状況と、大腿骨を骨折して療養中なのでほぼ自宅謹慎状態。しかし、30年前にタイムスリップしたと開き直ってしまえば、多少の不便はあっても、案外どうにかなることに気づきました。すでに世捨人、いや、隠居生活ですから、こんなのんきなことを言っていられるのですが。
 
 
 

台風とケガによる不便な生活の中、読書の楽しみを再発見(イメージ写真)

 
 

 ここ数年は視力、気力の衰えからか活字を読むのがしんどくなり、ネットで音楽や落語を聴き、映画も半分目を閉じて見ています。私にはなかなか楽しいのですが、かつては本の虫だったことを顧みると何か後ろめたい気もしていました。しかし、ネットはない、外出もままならないとなると、することの選択肢は読書しかありません。軽い本のページをこわごわ繰ってみると、読める! 谷崎潤一郎の「痴人の愛」を読了しました。
 

 内容をどれだけ理解したかはさておき、こうして読書三昧の日々が復活しました。同時に怒涛のように押し寄せるネット情報から、こんなふうに距離を置く生活も案外悪くないものだと思う今日この頃です。
 

 本稿が公開される頃には、ネットが復旧しているかもしれません。その時、どんなことを感じ、日常生活が変化するのか。そして、ケガから回復してから歩くセブの街はどんな風に見えるのか。今から楽しみにしています。
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